電気興業 の技術 (電興技報)

「電興技報」は電気興業グループの研究開発に関する論文や最新技術、製品紹介などをわかりやすくご紹介しています。
バックナンバーもございますので、ぜひご覧ください。
なお、冊子体の販売はしておりませんのでご了承ください。


56号(2024年)


巻頭言 「トレンド」

取締役執行役員 機器統括部長 土澤 賢明


グラビア


論文 28GHz帯ビームフォーミングアンテナシステム

28GHz 帯ビームフォーミングアンテナシステムに適した広帯域特性を有する,偏波共用ダイポールアンテナを開発した。開発アンテナは,VSWR およびアイソレーションに関して,国内 5G 帯域(27GHz~29.5GHz)をカバーする広帯域特性を実現した。ダイポールアンテナの検討をもとに,ビームフォーミング IC とアンテナを同一基板上に実装した,28GHz 帯ビームフォーミングアンテナシステムの放射特性を評価した。ビームフォーミング IC の機能とダイポールアンテナの特性により,3dB ビーム走査角 80°の範囲にわたって良好な放射ビームを実現できた。


論文 反射角度を再構成可能なパッシブ型メタサーフェス

メタサーフェス(MTS)反射板は反射波の方向やビーム幅を自由に設計可能である。当社では MTS 反射板を用いたエリア改善の柔軟性向上と低コスト化を目的として,28GHz 帯向けに電源を必要としないパッシブ型 MTS 反射板を提案する。
本論文では,MT 反射板への入射角度を維持しながら,水平方向の反射角度を変化させる手法と電磁界解析の結果を紹介する。提案する MTS 反射板は,回折格子周期となるセル 1 周期あたり6つのユニットセルで構成され,垂直方向に配列されている。誘電体基板を用いた反射板であり,ユニットセル数は垂直方向と水平方向にそれぞれ 36 個配列されている。水平方向の反射角可変を実現する為にMTS 反射板を短冊状に分割し,各短冊状の MTS 反射板を垂直方向に固定量分だけスライドさせる。スライドさせることで各短冊状の MTS 反射板の隣接する素子の位置が機械的に変化し,水平方向に対して反射位相の変化を生み出している。電磁界解析による解析を行った結果,隣接する短冊状の MTS 反射板のスライド距離の差を最大 12mm とした場合に,± 11.2°の反射角可変を実現できることを確認している。通常のパッシブ型の MTS 反射板では入射角度を維持する場合,反射角度は固定されるため,エリア改善の柔軟性向上と低コスト化が期待できる。


技術紹介 マイクロ波WPT機器の開発に向けた取り組み

マイクロ波を使用した電力送電である空間伝送型 WPT システムについて,注目が集まっている。本稿では,当社が行っている空間伝送型 WPT システムの実用化に向けての取組や開発状況等について紹介する。


技術紹介 多品種汎用エンジン用クランクシャフト高周波焼入焼戻設備

クランクシャフトの焼入焼戻設備は,クランクシャフトを回転させた際に加熱コイルの中心が,ワーク回転の軸芯であるジャーナル軸から偏芯した動きとなるピン軸に追従して加熱する追従式が主流である。汎用エンジン用クランクシャフト設備の場合には,焼入箇所の軸径と幅が小さいクランクシャフトが対象となるため,コイルの製作面,耐久性の面で課題があった。また,追従式では複雑な機構で機械動作も多くなるため,サイクルタイムの短縮が困難であり,設備が大型化する。これらの問題により,追従式は段替えが必要で多品種の加工をする汎用設備には不向きであった。
今回受注した多品種汎用エンジン用クランクシャフト高周波焼入焼戻設備では,これらの問題を解決するため,加熱コイルを上下に分割したクラムシェル型コイルを採用した。これにより,加熱コイルの形状が追従式よりシンプルになり,コイルの高効率化と高耐久性を実現した。クランクシャフトの搬送システムには,サイクルタイム短縮のため,単純な動作だが動作速度が速いガントリーローダーを採用し,高速搬送と段取自由化による生産性の高い設備を実現した。
本稿では,クラムシェル型コイルとガントリーローダーを組み合わせた新しいクランクシャフト焼入焼戻設備を紹介する。


製品紹介 鹿沼工場ローカル5Gシステムオープンラボの開設

本紹介記事は,ローカル 5G システムの開発・検証・拡販を目的として鹿沼工場に商用免許を取得して構築したローカル 5G システムオープンラボの概要について記す。システムを構成する装置は,エアースパン・ジャパン株式会社(以下,Airspan 社)提供の RU/DU/CUが一体となった Full gNB タイプの RAN 装置と,株式会社 NTC(以下,NTC 社)提供の 5G コアを採用している。RAN 装置は屋内と屋外に 1台ずつ設置して2つのセルを構築しており,ハンドオーバの実演も可能である。ラボでは通信性能の実演が可能であり,Wi-Fi との違いやローカル 5G の利点について紹介している。展示についてはローカル 5G システムとアンテナの紹介に加えて,AI を使った部品検査や人流分析,人物検知などのアプリケーションのデモ展示を行っており,来客者に直接体感していただくことが可能な場としている。


製品紹介 5G/LTE対応 2Band-indoor DASの開発

日本国内の移動体通信市場では 5G 対応基地局の整備が進んでいるが,さらにサービス範囲を拡充するために,屋外基地局だけではなく大規模商業施設などの屋内環境への対応も急がれている。
当社では,2021 年度に開発した 3Band 対応の屋内向け DAS 装置に続いて,新たに小型かつ低消費電力の 2Band 対応の屋内向け DAS 装置を開発したので報告する。


製品紹介 北米市場向けストリートセル用10ポートオムニアンテナ

北米においては日本国内では使用していない 600MHz 帯(Band71)を移動通信に使用しており,2021 年には 5G 用周波数として 3.7-4.2GHz 帯(C-band)が新たに追加された。また,MIMOによる通信速度向上のため多ブランチであることが求められる。本稿ではこれらに対応するアンテナとして開発した,600MHz 帯(Band71)を 2 ブランチ,1.7-2.6GHz 帯および 3.7-4.2GHz 帯(C-band)をそれぞれ 4 ブランチ構成としたストリートセル用 10 ポートアンテナについて紹介する。


製品紹介 公共業務用6.5_7.5GHz帯パラボラアンテナの性能改善

公共業務向け(防災行政,電力・ガス・鉄道事業用等の固定局無線)のアンテナとして,6.5GHz,7.5GHz,12GHz 帯のパラボラアンテナをラインアップしている。当社では伝送容量別に 2 種類のアンテナタイプで対応しているが,その 1 つである大容量伝送用パラボラアンテナについては,開口能率が低く,客先が要求する利得の仕様によっては対応できない問題があったため,構造変更の実施による利得性能向上を図った。
本稿では,客先からの引き合いが多い機種である 6.5GHz/7.5GHz 帯大容量伝送用パラボラアンテナについて,利得向上を図った主な仕様,構造について概要を紹介する。


製品紹介 高周波誘導加熱装置におけるロボット活用事例

当社の高周波誘導加熱装置は,顧客の要望に合わせて仕様を決定し製作している。生産ラインの構築方式は顧客により様々であり,機械への加工対象物(以下ワークとする)のロード(投入)/アンロード(排出)作業を人手で行うライン方式や,専用機による自動ライン方式など多種多様な方式が用いられる。近年の生産現場においては,省人化を見据えてロボットを活用するパターンが増えており,ロード/アンロード作業をロボットで行わせているラインも多い。
本稿では,当社で実施したロボットを活用したライン構築についてのメリット・デメリットと弊社におけるロボット活用の事例,及び,トレーサビリティの向上を目的とした印字(刻印)工程と,ワークの外観品質を安定化するための洗浄工程を組み合わせた事例などについて紹介する。


産業財産権 「2023年度に取得した産業財産権」


論文紹介 「社外発表および論文紹介」