バックナンバー54号(2022年)

「電興技報」はDKKグループの研究開発に関する論文や最新技術、製品紹介などをわかりやすくご紹介しています。
バックナンバーもございますので、ぜひご覧ください。
なお、冊子体の販売はしておりませんのでご了承ください。


54号(2022年)


巻頭言 「企業にとっての“研究開発”とは」

取締役執行役員 R&D 統括センター長 河原 敏朗


グラビア


論文 Beyond5G/6G を見据えたテラヘルツ波帯アンテナの検討

Beyond5G/6G に向けて,テラヘルツ波帯とよばれる 100GHz ~ 300GHz の超高周波の利用が検討されている。300GHz 帯での伝搬実験用オムニアンテナが求められているが,導波管インタフェースへの対応・微細構造などの理由により,実現されていなかった。本稿では,当社で開発してきたオムニアンテナを題材に,5G 以前のオムニアンテナと,Beyond5G/6G で割当てられる 300GHz 帯アンテナの構成・特徴・検討課題の違いについて述べる。また,300GHz 帯オムニアンテナについては,電磁界解析・試作による実測を行い,良く一致する結果が得られた。


論文 マルチシート構成によるローカル5G システム向け 偏波共用広角反射メタサーフェス反射板の開発

メタサーフェス(MTS)反射板は反射波の方向やビーム幅を自由に設計可能であるが,設置環境に合わせた設計が 都度必要になる。そのため,当社では設計の簡易化を目的として,異なる反射角を持つ MTS 反射板を複数配列した マルチシート構成のMTS 反射板を提案している。今回は水平面内 30°方向からの入射波を,54°~ 66°の角度へ 反射するよう 4 枚の異なる反射角を持つ反射板を組み合わせる反射板を開発した。また,開発した反射板について, 鹿沼工場内のローカル 5G 実験局にて測定を行い,実環境において広角な反射を実現できることを確認した。 本論文は,2021 年4 月に開催された EuCAP(15th European Conference on Antennas and Propagation)にて 報告した ”Dual-Polarized Broad-Beam Reflective Metasurface based on Multi-Sheet Configuration for Local 5G Application at 28.25 GHz” を改編したものである。


技術紹介 5G および Beyond 5G に向けた通信エリア拡張技術

第 5 世代移動通信システム(5G)および Beyond 5G の通信エリア拡張技術として,無線中継技術が注目されている。無線中継技術は以前から導入されているが,5G 以降でも重要な通信エリア拡張技術になると考え, 当社でも開発を進めている。本稿では,通信エリア拡張技術として DAS * 1,無線中継装置,反射板の概要について 触れる。また,当社の無線中継装置の取り組みにフォーカスを当て紹介する。さらに,国内外の標準化, 制度化状況について述べる。 *1 DAS:分散アンテナシステム(Distributed Antenna System)


技術紹介 ミリ波平面近傍界 /OTA 共用評価装置について

当社では,測定距離 12m と 7m の遠方界での指向性測定システム,6GHz まで測定可能な大型近傍界測定システムが導入済みである。これに続き 2021 年度にミリ波平面近傍界測定装置と無線装置の OTA * 1 評価装置を導入した。本稿では,その概要,仕様等について紹介する。


技術紹介 DENKO-CUBO における自動段替え機構の実現

DENKO-CUBO(以下,本設備)はコンパクトで汎用性も高く,低価格であるため受注の多い設備である。しかし,汎用性が高い一方,多品種生産においては,品種に対応した機械調整やコイルの交換を行う段替え作業が必要である。従来の段替え作業は,設備を停止させ,手作業で行うため,設備停止時間は作業者の力量や段替え回数に左右されていた。今回,本設備において,2 種類のコイル内径を有するダルマコイルを採用し,任意の位置に自動で移動可能なコイル前後ユニット及びセンタリングユニットを開発した。これにより,操作盤の操作のみで安全な自動段替えを実現し,段替え時間の短縮が可能となった。本稿では,本設備に新たに追加した自動段替え機構を紹介する。


技術紹介 過熱水蒸気の用途開発

高周波誘導加熱を用いた過熱水蒸気での食品加工について、当社は玄米などの粒体を加工する装置で特許を 取得している。今回は米ぬか(粉末)での加工方法の開発を行い、発生させた過熱水蒸気と米ぬかの分離に成功して 加工装置を納入した。その加工装置で生産された米ぬかは「米ぬかパウダー」という商品名で市場投入され、 健康食品として通信販売などで販売されている。


製品紹介 北米市場向けストリートセル用 18 ポートオムニアンテナ

北米移動通信市場では,市街地における通信速度向上要求に対応するためストリートセル用アンテナによる LAA*1 技術を用いたエリア構築を進めている。当社では北米市場向けに 1.7-2.4GHz 帯 /3.5GHz 帯 /5GHz 帯共用 アンテナを 2 機種製品化している。更なる通信速度向上を図るために新たな周波数帯の追加,および MIMO ブランチ数追加が求められている。本稿ではこれに対応するアンテナとして開発した 700-900MHz 帯, 1.7-2.6GHz 帯,3.5GHz 帯,5GHz 帯のストリートセル用 18 ポートオムニアンテナについて紹介する。


製品紹介 福岡タワー向け航空障害灯複合システム

当社の航空障害灯事業では,海外市場で航空障害灯の設計・製造を手がけるメーカと共同で,日本国内向け LED 航空障害灯の開発・販売に取り組んでいる。LED 航空障害灯の販売には,それぞれの灯器について, 国土交通省の承認を取得する必要がある。当社は,これまで多様な顧客のニーズに応えるため, 高光度(電源部分離および電源部一体型),中光度白色/赤色(電源部分離および電源部一体型), 中光度赤色(電源部一体型),低光度(電源部一体型)と航空障害灯のラインナップを取り揃えてきた。本稿では, 2021 年に福岡タワーに納入した,高光度,中光度白色 / 赤色,中光度赤色,低光度の各航空障害灯を同時に 制御可能とするシステムについて紹介する。


2021 年に取得した産業財産権


社外発表および論文紹介