誘導加熱の原理
誘導加熱は、高周波電流の流れるコイルの中に置かれた導電体(通電性を持つ材料)が、電磁誘導作用によって導電体に生じる渦電流損による発熱と、ヒステリシス損によって導電体に生じる発熱(磁性材料の各分子が交流磁束によって振動、摩擦するため発生する熱量)により急速に加熱される現象を用いております。
周波数の高い高周波電流を使用するため、電流の表皮作用(物体の表面にのみ電流が流れる現象)と、近接効果(コイルに流れる一次電流と、導電体に誘起される二次電流の方向が反対のため互いに引っ張り合い、電流は導電体の表面層に流れる)により導電体の表面に磁束および渦電流が集中し、表面に発生する渦電流損とヒステリシス損により、導電体の表面層だけを加熱することができます。
高周波熱処理(焼入・焼戻)の目的
表面硬化処理としての高周波熱処理(高周波焼入・焼戻)の目的は、機械構造部品の表面を硬化して、耐摩耗性を向上させることと、機械的性質(特に耐疲労性)を高めることです。 このことから、高周波熱処理加工は機械部品の摺動部分に加工されることが多く、自動車、オートバイのエンジン部品や足回り部品、ベアリング、ネジ、工作機械用部品の摺動部などに加工されております。
高周波熱処理(焼入・焼戻)の特長
- 直接加熱であるため、熱効率が良い。
- 短時間加熱であるため、酸化が極めて少ない。
- 局部加熱ができ、硬化層の深さの選定が自由である。
- 他方法に比べ、焼入歪みが少ない。
- 焼入条件の調整が容易である。
- 自動化が容易である。
- 機械加工ラインへの組み入れが可能である。
- 作業環境が良い(無公害である)。